
弁護士の志部淳之介です。
亡くなられた方が遺言を残した場合、
遺言が有効であればその遺言にしたがって相続が行われることになります。
しかし、遺言には様々なルールがあり、
不備があると遺言自体が無効となってしまう場合があるので注意が必要です。
例えば、実際によく争われるのが、遺言をした際に、
亡くなられた方がアルツハイマー型認知症を発症していて、
よくわからずに遺言を残してしまった可能性がある場合です。
遺言が有効となるためには、亡くなられた方が、遺言を作成した際に、
遺言の内容と結果を理解する能力があったことを証明する必要があります(民法961条)。
裁判例では、「通常人としての正常な判断力・理解力・表現力を備え、
遺言内容について十分な理解力を有していた」場合には、
遺言能力が認められるとされています(東京地判昭和63年4月25日家月40巻9号77頁)
もう少し、具体的にみていきますと、遺言が有効であると主張する側としては、
遺言を作成した時点の前後の言動や生活状況の記録、公正証書遺言であれば、
公証役場でのやりとりの記録・証言により、
遺言者が正常な理解力をもっていたことを証明することになります。
遺言自体の内容が単純であるかどうかもひとつのポイントです。
他方で、遺言が無効であることを主張する側は、
医師の診断書やカルテ(認知症の程度などを立証します)、
長谷川式簡易知能評価スケールの結果等により、
遺言者の理解力が相当低下していたことを立証していくことになります。
こうした医師作成による記録は、裁判においてかなり重要視されます。
このように、遺言能力をめぐる争いが裁判になった場合には、
様々な資料をもとに最終的には裁判所が判断を下すことになります。
大事なことは、こうした争いを予防するために、遺言者が遺言をする際に、
できる限り主治医に長谷川式簡易知能評価スケールなどを実施してもらうことです。
また、遺言の内容を協議、説明する際の遺言者の様子を録音、
録画するなどの工夫をしておくことも重要です。
執筆:志部淳之介