~相続の効力等に関する見直し~
2019年12月2日
今回の相続法改正には、相続の効力等に関する見直しがいくつかあります(2019年7月1日施行)。
(1)新法第899条の2第1項には、登記にからむ場面の判例理論を変更する内容が含まれます。
相続による権利の承継は、遺産分割によるものかどうかにかかわらず、
法定相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、
第三者に対抗することができなくなります。
①共同相続と登記に関して、次の判例理論がそのまま維持されます。
すなわち、共同相続人の一人が単独名義の相続登記を経由した後、
第三者への所有権移転登記をした場合、他の共同相続人は登記なくして
自己の持分を対抗することができる(最判昭和38年2月22日民集17巻1号235頁)。
②相続放棄と登記に関して、次の判例理論がそのまま維持されます。
すなわち、共同相続人の一人が相続放棄をした後、その者の債権者が
代位により相続登記をした上で、当該相続人の持分につき仮差押登記をしても、
それらの登記は無効であり、他の相続人は登記なくして自己の権利を
対抗することができる(最判昭和42年1月20日民集21巻1号16頁)。
③遺産分割と登記に関して、次の判例理論がそのまま維持されます。
すなわち、遺産分割により相続財産中の不動産につき法定相続分と異なる権利を
取得した相続人は、その旨の登記をしなければ、遺産分割後に、当該不動産について
権利を取得した第三者に対抗することができない(最判昭和46年1月26日民集25巻1号90頁)。
④「相続させる」趣旨の遺言と登記に関して、対抗要件主義が適用され、判例理論が変更されます。
《参照判例:「相続させる」趣旨の遺言によって不動産を取得した相続人は、
登記なくしてその権利を第三者に対抗することができる(最判平成14年6月10日家月55巻1号77頁)。》
⑤相続分の指定と登記に関して、対抗要件主義が適用され、判例理論が変更されます。
《参照判例:遺言により法定相続分を下回る相続分を指定された共同相続人の一人が、
法定相続分による共同相続登記がされたことを利用して自己の持分を第三者に譲渡し、
その旨の移転登記をしたとしても、他の相続人は指定相続分を上回る部分につき
登記なくして対抗することができる(最判平成5年7月19日家月46巻5号23頁)。》
(2)この新法第899条の2第1項の内容を実現するため、
例えば甲土地を相続人Aに相続させるといった内容の「特定財産承継遺言」の場合、
遺言執行者は財産を承継する共同相続人のために、
登記などの対抗要件具備行為ができるようになります(新法第1014条第2項)。
つまり遺言に別段の定めがなければ、遺言執行者がその権限内で遺言執行者であることを
示して行った対抗要件具備行為は、相続人に対して直接効力を生じ、
当該共同相続人は対抗要件を備えたことになります(新法第1015条)。
(3)その他細かなところでは、いくつか債権債務の承継に関する規定や
遺言執行妨害行為に関する規定があります。
【参考文献「相続法改正と司法書士実務」(東京司法書士会民法改正対策委員会編)
日本加除出版株式会社】
執筆:時岡アヤ子


